Story3 トーマス・フォガティー [ Thomas J. Fogarty, M.D. ] 手術を変えた、青年のひらめき

1963

約50年前の血栓除去手術は“いのちがけ”だった。脚部全体を切開し、血管を縦に開いて血栓を探した。血栓を見つけて除去できても、切り開いた部分が壊死して手足を失ったり、死亡する例もあった。
手術室の看護助手として働いていた、当時高校生のトーマス・フォガティーは、その手術を目のあたりにして衝撃を受けた。もっといい方法はないか? そんな思いを巡らせていたある日、水辺に垂れる釣り糸からひらめいた。

「釣り糸にかかる魚のように、血栓を釣れないか」

さっそく、そのアイデアを形にした。手術用の薄いゴム手袋の指先を切り、尿道カテーテルの先端に取り付けてみたのだ。それを勤め先の外科医に渡すと、医師は小さく切開した患者の太ももの付け根からカテーテルを挿入した。先端の手袋に空気を送り膨らませる。そしてそのまま引き抜いた。

画像:写真

フォガティー氏。
若くして医療現場での経験を積んだ。

これが世界初となる、フォガティーのバルーンカテーテルでの血栓除去手術だった。実にシンプルな発想だったが、血栓は見事に除去できた。
後にスターのすすめで、エドワーズの会社でこのカテーテルを製造することになる。青年だったフォガティーによる柔軟なアイデアが、困難だった手術を変える確かな道筋となった。

画像:フォガティーカテーテルの写真

カテーテルの先端が風船状に膨らむ。